桶    



  壬生狂言で最も重要な曲目である。それだけに演技が難しいとされている。
 壬生寺の近くに「照子」という美しい白拍子がいた。しかし不幸にも生れながらに
して左手の指が三本しかなかったので、来世は障害のない人間に生まれるよう壬生寺
の本尊・地蔵菩薩に祈願し、毎日、尼ヶ池(壬生寺の閼伽池)の水を桶に汲んで参詣し、
供えていた。これも寺近くに住む和気俊清という金持ちの大尽が寺へ参詣したと

照子を見初め、さんざんにロ説いて遂に馴染んだので、懐妊中の大尽の妻は嫉妬の

あまり果ては狂死してしまう。両人は前非を悔い、壬生狂言の始祖・円覚上人の導き
により、妻の霊を慰めるために僧となり、尼となって仏門に帰依したという。
  狂言では何故かこの物語の最後まではなく、妻が狂乱する所までしか演じられて
ない。照子が桶で水を汲む所作やその足取りは、佛の種字(佛を象徴する文字)が
現されている。また照子の踊りは独特のもので「かいぐり、つばめ、つかみ」の
3つ
の手をくり返すのである。